「英会話とプログラミングが同時に学べる!」「非認知能力が身に付く!」新潟市西区の英語×プログラミング教室ワンダーコード新潟新通校のオーナー森憲一郎です。
本日のブログテーマは、『アジア諸国のSTEAM教育㉑ブータンにおけるSTEAM教育の現状』です!
幸福の国の未来を拓く:ブータンにおけるSTEAM教育の挑戦と展望
ブータン――「国民総幸福量(GNH)」を最優先するこのヒマラヤの王国は、教育においても独自の、そして革新的な道を歩んでいます。経済発展と伝統文化、そして環境保全のバランスを重視するブータンにとって、科学、技術、工学、芸術、数学を統合したSTEAM教育は、未来の国づくりに不可欠な柱として注目されています。
導入の背景:なぜSTEAMが必要なのか?
ブータンの教育目標は、単なる知識の伝達に留まらず、GNHの理念に基づいた「良い市民」の育成にあります。しかし、グローバル化とデジタル化が進む現代において、知識を応用し、問題解決を行う能力、そして創造性がこれまで以上に求められています。
経済の多様化: 農業中心の経済から、ITや環境技術といった知識集約型産業への転換を目指す中で、高度な専門人材の育成が急務です。
GNHの実現: 環境問題や社会的な課題に対し、科学的・技術的なアプローチで持続可能な解決策を見出す能力は、幸福な社会の基盤となります。
国際的な潮流: 世界的な教育改革の波を受け、ブータンも国際水準に合わせた教育を提供することで、若者の可能性を最大限に引き出そうとしています。
ブータンSTEAM教育の「今」:具体的な取り組み
ブータン政府と関係機関は、STEAM教育を国家的な優先課題として位置づけ、積極的に導入を進めています。特に注目すべきは、教育機関と産業界、そして国際協力の連携です。
1. ロイヤル・ソサエティ・オブ・ステム(RSSTEM)の設立
Royal Society of STEM (RSSTEM) は、ブータンにおけるSTEAM教育推進の中心的な役割を担っています。これは、王室の指導のもとで設立された組織であり、教育省や関連機関と連携し、全国的なカリキュラム開発、教員研修、課外活動の支援を行っています。
2. ファブラボ(FabLab)を通じたデジタルものづくり
STEAM教育の実践の場として、ファブラボ(デジタルものづくり工房)の導入が進められています。
高専(CST)の役割: Royal University of Bhutanに属するCollege of Science and Technology (CST)など、高等教育機関にファブラボが設置されています。これらの施設は、学生だけでなく、地域住民や学校にも開放され、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を使ったプロジェクトベースの学習を提供しています。
実践的なスキル習得: 生徒や学生は、アイデアを具体的なプロトタイプとして形にする過程で、デザイン思考、協働性、そして工学的な知識を実践的に習得できます。
3. 教員研修とカリキュラム改革
STEAM教育を成功させる鍵は、教員がその理念を理解し、実行できるかにかかっています。
統合的なアプローチ: 従来の科目別の指導ではなく、異なる科目を関連付けた統合的なカリキュラムの導入が進められています。
教員能力の向上: RSSTEMや国際協力機関(JICAなど)の支援を受け、ブータン全土の教員を対象とした集中的なSTEAM指導法の研修が定期的に実施されています。これにより、教員は教室で探究型学習やプロジェクト学習を効果的に実施できるようになります。
4. 芸術(Art)の統合
ブータンは、伝統文化と精神性を重んじる国であるため、STEAMのA(Art/芸術)の要素が特に重要視されています。
創造性の重視: 芸術的な思考やデザインは、科学的な問題解決や技術革新に不可欠な要素と認識されています。伝統的な工芸や美術をデジタル技術と組み合わせることで、文化的な価値を未来に継承しつつ、新しい表現を生み出す取り組みも模索されています。
乗り越えるべき課題
ブータンのSTEAM教育は順調に進展しているものの、山岳国ならでは、そして開発途上国ならではのいくつかの課題に直面しています。
| 課題 | 具体的な内容 |
| 地理的なアクセスとインフラ | 地方の学校、特にへき地では、インターネット接続や電気といった基本的なインフラが不十分な場合があり、最新のデジタル機器や教材を導入することが困難です。 |
| 機器・教材の確保と維持 | ファブラボなどの高価な機器の導入には多額の費用がかかります。また、これらの機器の維持管理や修理を行う専門技術者が不足しています。 |
| 教員の定着と専門性 | 研修を経たSTEAMに強い教員が都市部に集中したり、離職したりする傾向があります。地方の学校にも質の高い指導を行える教員を配置し続けることが課題です。 |
| 評価方法の確立 | 知識の暗記に偏りがちな従来の評価システムから、創造性や問題解決能力といったSTEAMの成果を適切に測るための新しい評価方法への転換が求められています。 |
未来への展望
ブータンは、これらの課題に対し、国際的なパートナーシップを強化し、国内の教育機関と産業界との連携を深めることで対応しようとしています。
目標とする未来は、単に技術的に優れた人材を育成することだけではありません。STEAM教育を通じて、倫理観と社会的な責任感を持った、創造的で、環境に配慮できる若者を育てること。それが、GNHの理念に基づいた持続可能な「幸福の国」を次世代へ引き継ぐための、ブータン独自の挑戦なのです。
ブータンのSTEAM教育は、伝統を大切にしながら、未来の技術を積極的に取り入れる、世界でも類を見ない興味深い試みとして、今後も注目されていくでしょう。


